「これはスクープやで。音楽評論家の日下部吉彦氏の息子さんが、京都でクラシックカフェを開いてるから取材してみたら!?」。FM OH!「おしゃべり音楽マガジン くらこれ!」プロデューサーの吉川智明さんから一本の電話が入って、足を運んでみた。  

 観光名所として賑わう京都の三条通に面した場所にあり、大正9年に建てられた洋館「文椿ビルヂング」は、100年経ってもなお、大正ロマンの風情を漂わせている。

年季の入った木造階段で2階に上がると「カフェ星雲」を見つけた。一歩店内に入ると、大きな窓から陽射しが差し込んで温かい。店長・日下部雅彦さんは、父・吉彦さんと顔が瓜二つで、話しはじめるとさらに姿は重なった。

 「好きな音楽をかけて、たまにはここでミニライブもできるような、『クラシックのたまり場』を作りたいと思っていました」。退職してから念願のカフェをオープン。20年以上の海外赴任中には、ミュンヘンやケルンでオペラやコンサートに通い、香港では、アマチュアオーケストラの演奏会で指揮台にも上がった。会社員時代に、マイナーなCDも含めて2000枚ほど購入したが、忙しくてほとんど聞けずじまい。「カフェを開いたら、たまったCDを聴くことができるなぁと……」。ひょうひょうとした語りが面白い。ビルヂングの一階にある看板には、毎日の音楽プログラムがチョークで書かれている=写真左=。読んでから2階に上がると、まるで演奏会に足を運ぶ気分だ。カフェを教えてくれた吉川智明さんが、いそいそと2階に上がっていく姿が想像できる。

 日下部さんは、チェロの演奏や作曲・編曲まで手掛け、今でも学生時代のオーケストラ部の仲間たちと一緒に演奏活動を続けている。「ずっと海外赴任で、2年に一度は集まっていましたね。『いつかみんなで集まって演奏会を開きたいね』と話していたら、昨年実現しました」と微笑む。カフェでは、月に1度、娘さんと一緒に演奏したり、京都大学オーケストラ部のメンバーが出演したりするミニコンサートを開催している。

 クラシック音楽を愛してやまず、その姿は楽譜に書かれた音符のように弾んでいる。そんな日下部さんと音楽を語らうのを楽しみに訪れる常連客もいて、クラシック愛好家たちの繋がりを深めている。
カフェ星雲
080-9607-2271
京都市中京区三条通烏丸西入る御倉町79 文椿ビル2階
営業時間:11時半~18時(金・土曜日は21時まで)
定休日:月、火曜日
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