「普段着で愉しむクラシック・ライブ」
 目を閉じて聴いていると、ほんの1メートル先で演奏されているとは思えないほどの心地良い音色。そして、弦を弾く姿からは、息づかいまで聞こえてきそうだ。一気に、初めて出会った演奏者のファンになってしまった。4月5日午後8時から、林七奈&田村安祐美(ヴァイオリン)、小峰航一(ヴィオラ)、上森祥平(チェロ)の皆さんによる弦楽四重奏の演奏会が開かれたときのことだ。交流会では、話しかけるのが恥ずかしくなるほど、胸はときめく。
 ここは、京都・地下鉄丸太町駅から東に歩いて5分ほどの場所にある「Café MONTAGE」。劇場とカフェが一体となった空間で、収容人数は40人ほど。月に5~7回ほどクラシックコンサートや演劇が上演されている。落ち着いた住宅街にあり、柳馬場通と夷川通の交差点にある。店を出したきっかけは、店長の高田伸也さんが、ヨーロッパに留学中、人々がさまざまな公演に足を運ぶ文化に触れ、日本でもそんな劇場文化が広まればとの思いからだった。
 音響のために床は5重構造となっており、反響
板や一部の天井が低くなっている。内装は、約3ヶ月かけて高田さんが手掛けた。なかでも苦労したのは床貼りで、慣れない頃は一日に床板を3本しか貼れなかったと、苦笑い。そんな苦労を重ねて出来上がったカフェ・モンタージュの音響について、塩見亮(ピアノ)さんは「お客さんが入ると防音効果となり、調度いい響きになります」と話した。
 珈琲のほかにも、ビールやグラスワインもあり、濃厚な味のケーキ〝タルト・フロマージュ〟は人気商品だ。そして、ここではお茶を楽しみながら、リハーサルを聴くこともできる。普段着の演奏者たちによる、さざなみのようなピアノのタッチ、勢いよく楽譜をめくる音、気持ち良さそうに弦を弾く表情。そんな打ち合わせの風景を見ていると、音楽がより身近に感じられる。常連客の女性は「重厚で贅沢な空間ですね。ほかにあんまりないこの空間が好きで、週に1、2回来ています。リハーサルに、たまたま遭遇するのも、楽しみの一つです」と話した。
 公演は、ほぼ満席のため、映画「ローマの休日」のように階段に座って聴くことも。高田さんは、「今度はいつ何をするんやろうなと待ち望んでもらえるような店にしていきたいですね」と、両手をそっと合わせた。

(Classic Note 5月号より)

カフェ・モンタージュ
075-744-1070
京都市中京区夷川通柳馬場東入ル五丁目239-1
定休日:不定休
公演情報、休業日、リハーサル・カフェの日などはHPで公開
http://www.cafe-montage.com