「カウンター席に福」
 「わたしゃお多福、御室の桜、花(鼻)が低くても人が好く」と歌われた京都の仁和寺に咲く御室桜のように、「誰が来ても親しんでもらえるお店を」という思いが込められた「御多福珈琲」。阪急四条河原町から西へ歩いて5分ほどで、藤井大丸の手前にある。
 店長の野田敦司(39)さんは、ルパン3世のようなモミアゲの持ち主。席に座りしばらくすると、その力強い髪型と優しげな眼差しとのギャップに気がつく。12年前、毎月15日に開かれる知恩寺の手作り市でコーヒーの屋台を始め、8年前に御多福を開いた。和歌山県出身の野田さんは、小さな頃から、お父さんに連れられて喫茶店に通い、ミキサー
でミックスジュースを作るマスターの姿がかっこいいと幼心に思っていたという。週3回、西陣の焙煎所で豆を仕入れている。野田さんが少しかがんで、円を書くようにころ合いを見計らってお湯を注ぐと、ペーパードリップの豆がうず状にぷっくらと膨らむ。その姿はまるで豆と対話しているようだ。

「当店自慢のブレンドコーヒーでございまーす」。コーヒー一杯400円。お湯を注ぐ時の丁寧な姿勢のように、お客さんに話しかける野田さん。カウンター5席が埋まっても、まるで聖徳太子のように一人一人の言葉を拾い膨らまして返す野田さんのトークは、喫茶店の空間を和ませている。

075-256-0788
京都市下京区寺町通り四条下る
貞安前之町609 コロナビルB1

10:00a.m.~10:00p.m.
毎月15日休み