ー心配りの80年ー 
 「京都へ行くならここがお勧めやで」と友人に教えてもらったのは、昭和7年創業のスマート珈琲店。
 京阪三条駅から徒歩5分ほどの寺町通りにある。まず看板のロゴマークが目にはいった。白地にこげ茶色の影絵で、男性と女性がテーブルを挟み、お茶を楽しんでいる姿が描かれている。店内は、平日の2時だというのに満席。入って右手に、高さ2メートルのドイツ製プロパッド機が出迎えてくれる。40年前から、この機械を使って今も豆をひいているという。
 店長は3代目の元木章さん(36)。創業者である元木さんの祖父は、徳島から京都にきて「近すぎず、遠すぎず、気の利いたサービスを」との想いを込め「スマートランチ」を創業し、戦後「スマート珈琲店」に名前が変わった。店のロゴマークも創業者が考案し、元木さんは小さい頃からこの影絵を見て育ったという。 「出勤前の1杯、仕事後の1杯、待ち合わせの1杯と、お客さんにとって特別な場所でありたい」と元木さんは優しげな表情で語った。
 おすすめは、ホットケーキ(550円)。食べてみると、素朴で、あっさりとした味わい。季節により、粉の配合など練り合わせ方を変え、いつ食べても同じ味になるように工夫しているという。隣の席に座っている女性は、ホットケーキの上にある手作りバターを、フォークでクルクルと回しながら溶かしていた。
奥の席では、常連客らしい和服姿の女性と背広姿の男性が、珈琲を注文。元木さんは、コーヒーカップを、ボウルに入った熱湯に勢いよくくぐらせ、決まった角度から艶やかな色したコーヒーを注いでいた。
 その名の通り、スマートなサービスが、三代に渡り引き継がれているようす。1杯の珈琲は“心配り”がブレンドされ、落ち着いた香りが漂っていた。
075-231-6547
京都市中京区寺町通三条上がる
8:00a.m.~19:00
2Fランチタイム 11:00a.m.~14:30