「ここは大阪で一番好きな場所」と少年のような瞳で話してくれたのは、MJB珈琲店3代目の社長横井純一さん58歳。珈琲店がある大阪の淀屋橋交差点付近は、堂島川と土佐堀川に挟まれた中之島があり、大阪のシンボルともいえる赤レンガの市中央公会堂やギリシア神殿のような府立中之島図書館など歴史建築が並んでいる。どちらも国の重要文化財で、約100年前の建物だ。
週末になると、これらの建物をデッサンする人の姿をところどころ見かける。淀屋橋周辺はオフィス街でもある。
 昭和21年、戦後の焼け野原だった心斎橋で珈琲店がはじまった。当時、GHQの支配下にあった日本。PXという占領軍の物品販売店に、”MJB”という緑色の珈琲豆の缶詰が売られていたそうである。創業者の秋山さんが、MJBの缶を手に入れることができ、喫茶店をひらくことになったという。店名も、その缶詰からきているそうだ。その後、店は心斎橋だけでなく上六など、多いときで6店舗開き、現在は淀屋橋店のみである。大阪で、1,2番目に古い喫茶店でもある。
 「ほんまもんのコーヒーをお客さんに飲んでもらいたい」と、横井さんは茶目っ気たっぷりに笑った。コーヒー1杯420円。珈琲皿にのった2つの白い角砂糖が懐かしい気持ちにさせる。
 1日に3回もコーヒーを飲みにくる会社員らもいるという。ストレスの多い人たちにとってオアシスのような場所なのかもしれない。ほとんどが常連客で、高齢化がすすみ、入り口から地下一階までのらせん階段を、10分かけて降りてくる人もいるそうだ。
そんなお客さんのために、階段に手すりをつけたという。「MJBにくるために、ヨッ~コイショと時間をかけて降りてきてくれる。そんなことが嬉しい」と和んだ表情で階段を見つめていた。
 「地元の香りがする、地元の味がする喫茶店でありたい」と弾んだ口調で話す横井さん。そのためには豆の鮮度が大事という。手すりを持ちながら、ゆっくりと降りてくるお年寄りのお客さんと「大丈夫かいな」と待っている横井さんの姿を想像するだけで、MJBのやんわりとした香りが漂ってくるようである。
06-6203-0078
大阪市中央区北浜4-1-1
石原ビル B1F
月~金 7:30a.m.~10:00p.m.
土曜日 8:00a.m.~6:00p.m.
祝日  9:00a.m.~6:00p.m.