「変わりゆく街で 変わらない喫茶店」
 店内を1歩進むと、まるでスペインの街角に足を運んだような気持ちにさせられる。白壁にはアーチ様式にくり抜かれた小窓があり、ところどころにある透かしの鉄のフェンスが異国の雰囲気を漂わせる。天井からツタが垂れている井戸もあり、パティオ(中庭)風な作り。
 伊達は、阪急17番街のビル5階にある。昭和47年から約40年続いている喫茶店。オーナーが、スペインで買い付けたテーブル、ランプなどが創業当時のまま使われており、深い趣きを感じる。
 店内は、ランプの灯りと窓から差し込む光だけで、やや薄暗い。陽が暮れると、朱や黄色のランプの色が鮮やかになり、お客さんたちの姿がまるで影絵のように白壁に一層濃く映り始め、広い窓からはビルの明かりが灯り始める。
 常連客の女性は、ランプや木の空間が落ちつき、窓側の席に座ると梅田の景色が見渡せるのがいいという。そういえば以前は、マルビルの電光掲示板がくるくる回り、お茶をしながら流れてくるニュースを何気なく見たものだ。今は、その掲示板もなくなり、阪急百貨店も新しくなった。そして女性は、街の様子が変わっても、伊達だけは変わらないと声を弾ませた。
 座る席によって、誰とどんな会話をしたか思い出す。時が経ち、色んなことが変わっても、思い出だけは残って積み重なっていく。店長さんは、「変わらず落ち着けるという、こんな店があってもいいのでは」と両手をそっと合わせた。


06-6373-0071
大阪府大阪市北区芝田1丁目1-4
阪急ターミナルビル阪急17番街
月~金、土日 9:00a.m.~9:00p.m..