「人が集まってくる場所」
 カラカラと扉をひくと、お客さんたちの話声に包まれる。大正10年創業の平岡珈琲店は、地下鉄本町駅から北へ歩いて5分ほどのところ。大阪で1番古い喫茶店で、今は3代目の小川清さん(54歳)が継いでいる。
 店内の木の壁には、写真がずらりと飾られている。プロ以外の方を対象に、無料でギャラリーとして提供しているそうだ。3週間に
1度のサイクルで展示物を変え、2年先まで予約で埋まっているという。12年前から始まり、今まで展示されてきたものは、能面、猫の写真、人形など。全身ピンク色の人形ばかり飾られたときはちょっと気持ちが悪かったと、思いだし笑いをする小川さん。「ギャラリーを借りるのは高額。せっかくの作品が埋まってしまうと可哀そうだから、こうしていろんな人たちに見てもらえればね」と話した。
 カウンター席で小さな女の子が、外国のコインを手のひらに乗っけて、「おじちゃん、これで払っていい~?」と話している。それはずるいでぇと首をかしげる小川さんの姿を見ながら、サクサクッとした触感の手作りドーナツ(120円)を食べ、深みのあるブレンド(320円)を飲むと、一人で味わっている気がしない。飲んでいる間にも、次々と常連
さんが店に入ってきて、「もうドーナツ売り切れました~」と呼びかける小川さん。杖をついたお婆さんは、それでもいいよと頷きながら席に座る。
 カウンター席に一人で座っていた女性は、祖父の代からの常連で、「あそこの珈琲はおいしいで」と話すのを小さな頃から聞いていたそうだ。そして、平岡珈琲店の近くでアルバイトをしている頃、毎週のように通うようになったという。この日は、近所で教えているオーボエ教室の帰りに立ち寄ったと話し、「今日は、生徒さんが吹けるようになって嬉しい」と目を細めながら、コーヒーカップを口に近づけた。
06-6231-6020
大阪市中央区瓦町3-6-11
月~金 7:30~18:00
土 7:30~13:00 定休日 日・祭日