「北船場の懐かしい喫茶店」
 道修町(どしょうまち)は、江戸時代から薬の研究が盛んに行われてきた地域で、今でも〝くすりの町〟と呼ばれている。谷崎潤一郎の小説「春琴抄」のモデルとなる薬問屋もあったというこの辺りには、薬品会社やその倉庫などがあり、昔の船場の名残を感じることができる。その一角にある昭和34年に創業された「リスボン珈琲店」。地下鉄淀屋橋駅から歩いて5分ほどのところにあり、赤いリスボンと書かれた旗が目印だ。 メニューは、創業当時からほとんど変わっていない。ミルクセーキ(450円)やホットレモン(450円)などは、手作りならではの丸みのある味。ホットレモンは喉越しが良く、すっぱさと甘みのバランスがいい。もちろん、珈琲(350円)もマイルドで美味しい。
 オーナーの西口知子さんは、「店の特徴 はこの雰囲気」とゆっくり話す。レトロなだけでなく、どこか家庭的で柔らかい匂いがする店内は、西口さんの可愛らしいエプロン姿と大阪弁のせいかもしれない。当時からある「LISBON」と彫られた椅子は、現代人にしては低め。店を改装するときに、新しく作った椅子もあり、そのため、背もたれに
彫られた鷹は、頭がとんがっていたり丸かったりとあるそうだ。
  土地柄のせいか男性客が多く、中高年のサラリーマンが1人で新聞を読んだり、商談話に花を咲かせたり。 この店はビジネス街にあるが、独特のゆったりとした時間が流れている。席に座れば、どんなお客さんでも リスボン時計に溶け込んでしまうようだ。
  温かい雰囲気が漂う喫茶店。西口さんの顔を見に、またふらっと訪れたくなる。
リスボン珈琲店
06-6231-1167
大阪市中央区道修町3-2-1
午前7時半~午後5時
定休日:土日、祝日