「懐かしい黄昏時」
 細い路地に古い民家が並び、銭湯、小さな喫茶店、料理屋、雑貨屋で賑わっている中崎町。繁華街の梅田から歩いてすぐだが、昭和の戦火をまぬがれて、下町の風情が残っている。地下鉄中崎町駅から北へ歩いて5分ほどの「太陽ノ塔」は、9年前に創業し、5店舗あるなかの第1店目だ。
 外観は、いたって平凡。でも、ガラス越しに店内を見ると、どこか異次元の世界を覗きこんでいるような気持ちにさせられる。天上は赤色の骨組み、レトロなランプやシャンデリアがぶら下がり、壁には写真やイラストが飾られている。
 店名から、大阪万博の「太陽の塔」を想像してしまうが、太陽の塔のオブジェなどは一つも見当たらない。「オーナーは、太陽の塔が好きだったわけじゃなくて、ただ店名にインパクトが欲しかっただけだそうですよ。あやかり系ですね」とお日様みたいに笑うアルバイトの久川麻衣子さん(30)。
 久川さんともう一人のアルバイトの中西維さん(24)は、互いに「キューちゃん」「ユイちゃん」と呼び合いながら手際良く下ごしらえをしている。フライパンの上に、山盛りの細切り人参、ミキサーにかけた野菜などを混ぜ合わせ、30分かけてデミグラスソースを作る。このソースを使ったロコモコ(680円)やオムライス(780円)が人気商品。出来立てのソースがフライパンごとカウンターに置かれると、今度は「ゴウッ」というガスバーナーの音を立てて、中西さんがクリームブリュレを作る。カウンターに座って、料理の手さばきを眺めていると、自宅のキッチンでくつろいでいるような気持ちに。
 お客さんは若者が多いが、平日のお昼には、老夫婦がコーヒーを飲みに来たり、2階にある映画館から観終わった人も訪れるという。黄昏時、何故か懐かしい気持になる喫茶店だ。
太陽ノ塔
06-6374-3630
〒530-0016
大阪市北区中崎2-3-12 パイロットビル1F
電話 06-6374-3630
午前11時~午前0時
無休
http://taiyounotou.com/